「不可能です」という最高のアドバイス

Bamboo社長のプロジェクトマネジメント論
<コンサルティング>

こんにちはバンブー社長です。
あなたが雇ったプロジェクトマネージャーに少しリスキーな相談をした時、

「不可能です」「条件次第です」では、

どちらが有益なアドバイスだと思いますか?
あなたの相談が90%の確率で実現不可能だった場合で想像してみて下さい。

プロジェクトマネージャーの役割・責任

プロジェクトマネージャーにとって、
言うのが一番難しい言葉は「不可能です」かもしれません。

だって、それを断言する為には、
ありとあらゆる諸条件のシミュレーションができていて、
その自分の決断に確信を持っている必要があるからです。

それは、他のPMが判断すればOKかも?
という可能性を排除できているって事。

バンブー社長

「俺が不可能と判断したなら、この世に可能な人間は存在しない!」
そう言えるくらい、自分に自信がないとダメなのかもしれませんね。


だからレベルの高くないPMは、90%不可能だと思っていても
「不可能な可能性がある事をご了承下さい」
くらいの温度感でしか伝えられないのです。

でも、プロからそんなアドバイスをもらった依頼主はどう考えるでしょうか?

「ダメになる確率が多少はあるけど、がんばれば何とかなる。って意味だよね。」
こんな感じだと思います。

その結果的、奇跡はおこりません。

バンブー社長

初めから「不可能です」と教えてもらえれば、大惨事にはならなかったのに。
最終的に損をするのは、そんなアホなPMを雇ってしまった依頼主です。


もう一度聞きます。

あなたは、
失敗90%/成功10% 
の相談をした時に誰のアドバイスを受けたいですか?

3人のプロジェクトマネージャー

Aさん 「不可能です」(10%の成功率にかけるのはリスクが高すぎる)

Bさん 「可能かもしれません」(低い成功率にかけるかは発注者の判断でしょ)

Cさん 「このような条件なら可能です」(その条件のハードルの高さは発注者の判断でしょ)
       ○○を諦めて下さい。
       ✕✕の品質が確実に落ちます。
       △△を提供する事ができません。
       □□という大変な役割を担っていただかなくてはなりません。


Cさんのポリシーは
「不可能と言うのではなく、どうすれば可能かを伝えるべき」です。

一見、最も合理的な行動のように見えます。
但し、彼の提示する条件は現実的なのでしょうか?

そのハードルの高さは、誰にでも判断できるものでしょうか?

期待値を調整する


例えば、発注者のリクエストが「マイクタイソンを倒して下さい」だった場合です。

条件 ⇒ 現実

①100人 対 1人 の対決なら勝てるかもしれません。
 ⇒いや~、やっぱり1対1で戦ってもらわないと、卑怯だと思われちゃいます。

②金属バットとスタンガンを持っていたら勝てるかもしれません。
 ⇒う~ん。やっぱり、お互い素手で戦わないと、ウチの会社のイメージが落ちちゃいます。

③マイクタイソンが90歳になってから戦えば勝てるかもしれません。
 ⇒いやいや、来年の3月までに倒せって社長に言われているのです。

④あなたも一緒に戦って下さいよ!
 ⇒無理ばかり言ってないで、現実的な条件を改めて提示して下さいよー。
  約束通りマイクタイソンを倒してくれるんですよね?


さあ、こんな状態になってしまったら、もう大変です。💦

Cさんは責任逃れをしてきます。
「だって必要な条件をクリアしてくれないのは発注者さんでしょう~」

これが、発注者にとって一番最悪な。「後から不可能」です。

いよいよ、マイクタイソンが襲い掛かってきたら、、
もう逃げるしかありません。

もちろん、「初めから不可能」が判断できる回答できるAさんなら、
上記の例が、非現実的な条件であることを分かっていたんですけどね。

「シュガーマンのマーケティング30の法則」というビジネス書には、
臭いものの蓋を開けろ。という有名な言葉があります。

それは、自分のサービスのネガティブなポイント
(本来であれば言いたく無い事)をしっかりと顧客に伝える重要性を表しています。

バンブー社長

ありもしない可能性を、お客様に期待させるのは、  
キャバクラ嬢が使うテクニックです。
プロジェクトマネージャーがそれをやってはダメですよ。   

可能性ゼロ

どう考えても「初めから不可能です」が、最も適切なアドバイスですよね。

プロジェクトマネジメントの本質

プロジェクトマネジメントとは、
フィービジネスですので物理的な成果物がありません。

予めサービスを提供する側が、
正確な期待値調整をおこなうべきです。

なぜならば、サービスを受ける側(顧客)は、
条件を判断できる定規を持っていない場合が多いからです。


難しい課題に対して、
成功へのコミットそれに必要な条件が発生します。

前者を過大評価して、
後者を正確に理解するのが難しいのには理由があります。

それは
「プロが提示する条件なのだから、そんなにハードルの高い事ではないでしょう。」
という、危険な確証バイアス(人は自分に都合よく解釈してしまう)にかかってしまう為です。

プロは非現実的な条件を言わない
、なんて事は全然ありませんよ。

自分の責任回避が出来ていればOKだと思っている人。
そもそも、その成功率(リスク)さえも判断できない人。は、論外だとして、
Yesマンでいる(媚びる)事のみを最重要視しているPMも大勢います。

もちろん、そんなPMは顧客目線でも何でもありません。

プロジェクトマネジメントの本質的な役割には、

「始めから不可能」 「始めからNO」 「やらない方が良い」

そういった消極的なアクションも含まれており

時にそれは、積極的なアクションよりも有益なパフォーマンスになります。



それはプロだからこそ提供できる本当の顧客目線のサービスです。

今回も読んで頂き、ありがとうございました。^^

新村裕介
株式会社SPINNA BAMBOO 代表取締役

飲食店の調理師、店舗の工事会社、大手不動産系列の建築デザイン会社、大手什器メーカーのPM部門を経て、
2022年8月 株式会社SPINNA BAMBOOを設立。
ブランドショップの工事担当から、オフィスづくりの法人営業、ビル改修のコンストラクションマネージャー、
総予算100億円を超えるオフィス移転のプロジェクトマネージャーまで、多種多様な実績を積んできました。
この長年の経験を活かして、常にプロジェクトの入口から出口までの一気通貫した全体視野を持ちながらも
それぞれのステージに必要な役割に特化した、専門性の高いパフォーマンスを発揮します。
また、某大手IT企業での総務マネージャー経験もある為、インハウスの目線で課題を掴む事も得意です。

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