オフィス・働き方のアンケート調査
Bamboo社長のプロジェクトマネジメント論
<プログラミング>
へー。
そうなんだ。
色々と、大変だね。
こんにちは、バンブー社長です。
新しいオフィスをつくる時には、
設計を開始する前に社員アンケートを実施する事がよくあります。
ただ、私は
アンケート結果 ⇒ 設計デザイン
という短絡的な考え方には少し懐疑的です。
アンケート結果の使い方
確かにアンケートから導き出される
定量データ自体は有用なものであると思います。
但し、その数値にばかり囚われてしまうと、
将来を見据えたチャレンジへの障害となってしまう可能性もあるからです。
アンケートはアンケートでしかありません。
そこに答えは書いてありません。
そこにあるのは、ただの情報です。
その情報を適切に解釈(翻訳)して、
判断ツールの一つとして捉える程度が適切です。
最近のアンケートによくあるのが、
Web会議ブースは何台くらい必要ですか?
というQuestionです。
それには、以下のような設問が続きます。
・セミクローズで良いか? ⇒ リーズナブルで、占有スペースが少ない
・完全個室の方が良いか? ⇒ お金がかかるし、占有スペースが大きい
アンケートの回答者は、
プロジェクトの全体予算もオフィスの全体面積もまったく考慮しません。
質問に素直に答えるだけです。
だって、その希望を叶える為には
・その代わり、あなたのデスクが20%小さくなります。
・その代わり、あなたの夏のボーナスが3万円減ります。
そんな注釈がついていなければ、当然の結果といえます。
まあ、この手のリクエストに満額回答する経営者は少ないでしょう。
限られたスペースやコストの中で要望に応える為には、
「他の用途に充てているスペース」や
「他の支払いに充てているコスト」と
トレードオフしなければばりませんが、無理なんです。
10台のリクエストに対して6台が限界。
という結論になります。
いや、だってさ。
①デスクが20%小さくなる事は、絶対ダメだろ!
②ボーナスが3万円減るのは、さすがにダメだろ!
③Web会議ブースが足りなくて、時々使えないのは、
それは、、ま、まあ我慢できるんじゃないのかな。汗
これが「常識的にプライオリティを判断した結果」です。
客観的にみれば難しい判断とは思えませんが、
実は、その判断ができない人も多いのです。
なぜならば、
③は数値がアンケート結果に表れている一方で
①②は根拠を示しているものが無い感覚での判断だからです。
アンケートをとってしまった手前、
どの願いを叶えるべきか?
を、自分で判断するのが怖いんです。
あなたはアンケート結果をどのように使いますか?
Reasonとして使う? Excuseとして使う?
情報を読み解く
アンケート結果のように目に見えるデータばかりでなく、
見えないものを想像する必要もあります。
第二次世界大戦中、
軍部司令部は戦場から帰ってきた戦闘機のデータだけを集めていました。
その為、
無事だった(生還した)戦闘機が砲撃された場所を一生懸命強化していたのです。
本来であれば、
無事じゃかかった(撃墜された)戦闘機が砲撃された場所を強化するべきなのに。
本当にオフィスに必要な機能は、
アンケートで出てくるような表面化された意見だけではなく、
昨年退職してしまった人達や、大きな声が出せない人達の中に
潜在的に埋もれているかもしれません。
確証バイアス
ここからは、確証バイアスの危険についてお話します。
これは簡単に言うと、自分の考えが絶対に正しいという思いこみの事です。
例えば
「分かった、そんなに言うならWeb会議ブースを10台入れてやろうじゃないか!」
と社長が決断した結果、その翌年の売上げが20%変わりました。
その売上げの変化は、
はたしてWeb会議ブースのおかげでしょうか?せいでしょうか?
<20%UP>
単純に需要が高くなったからかもしれませんし、
ライバル会社が倒産したからなのかもしれません。
むしろWeb会議ブースなんかより製品プロモーションに投資をしていれば、
売上は50%UPしていた可能性もあります。
<20%DOWN>
コロナウイルスの影響かもしれません。
そんな中でもWeb会議ブースが活躍した事により、
被害を最小限にとどめる事ができました。
Webブースを導入していなかったら、
売上げは50%ダウンしていた可能性もあります。
社長は言うかもしれません。
「わっはっは、私の判断は正解だな!今年は、Web会議ブースをさらに20台追加しよう」とか、
「本当は初めから反対だったんだ。Web会議ブースなんて10台も必要ない、5台に減らせ!」と。
そうなったら、もうこの会社に未来は無いでしょう。笑
成功者や権力者ほど、この確証バイアスに陥りやすいと言われています。
例えば、瀉血という19世紀まで広く認められていた医療行為があります。
病気の人の血には病原菌が含まれていると考え、
病人から大量の血を抜く事で患者の回復をはかるという恐ろしい手法です。
当然ながら、そんな方法で病気が治るはずも無く、多くの人がこの治療で命を落としました。
そんな非科学的な行為が何十年間も行われていたのは医者が確証バイアスにかかっていたのが原因です。
医者の確証バイアス
瀉血をおこなって患者が助かれば「瀉血のおかげだ」
瀉血をおこなって患者が死ねば「瀉血ですら助けられないほど重症だった」
中世の魔女狩りとか、信じ難い冤罪事件も、このような確証バイアスによって引き起こされたと言われています。
犯罪の減少は武器の販売禁止のおかげなのか? それとも他の原因か?
経済が停滞したのは税率が高すぎたせいなのか? それとも他の原因か?
ある問題を引き起こした本当の原因を知るのは難しい事です。
私たちは表面的な情報やバイアスに囚われず、新しい情報を積極的に取り入れて、
柔軟で確かな現実感覚を磨いていく努力をしていくべきです。
そうしなければ、今分かっていない事が何なのか?
すら、分からないですからね。
Googleで「私の知らない事」と検索しても、何も出てこないのと同じです。
オフィス設計との融合
上記の例は過去におこった出来事の検証です。
オフィスづくりとは、どんな空間をつくれば将来的な効果を期待できるか?
そうです、未来の出来事を想像する、さらに超絶難しい課題なのです。
美人コンテストで例えるなら、
現時点ではなく、10年後に最も美人なのは誰でしょう?となります。
そんなノストラダムスな答えが、アンケートの結果なんぞに書いてあるわけがありません。
アンケート結果なんて素材の一つです。
どのように解釈して、どのように具現化させるか?
それが、アンケートで算出された合計値や平均値よりも、はるかに重要です。
具現化とは、その会社(発注者)にとっての最適化の事です。
オフィスの面積・コスト・導入期間・フレキシブル性
そういった全ての要素を、つまり、プロジェクトの全体最適化を鑑みた設計をする。
それが、アンケート結果をオフィス設計に融合させる事と言えるでしょう。
アンケートを実施すれば、正解にたどり着けると考えた人。残念。
つまり、次のステップに必要なのはクリエイティビティです。
・アンケート結果を読み解く想像力
・それを計画に落とし込む発想力
さらに言えば、
どこにも答えが書いていない事について決定を下す判断力も必要で、
当然ながら、その判断はアンケート協力者への説明責任も発生します。
答えが書いてあるものではなく。 答えを探し始めるもの。
責任を回避できるものではなく。 責任を負うもの。
ちょっと、大げさですかね。笑
今回も読んで頂きありがとうございました。^^
新村裕介
株式会社SPINNA BAMBOO 代表取締役
飲食店の調理師、店舗の工事会社、大手不動産系列の建築デザイン会社、大手什器メーカーのPM部門を経て、
2022年8月 株式会社SPINNA BAMBOOを設立。
ブランドショップの工事担当から、オフィスづくりの法人営業、ビル改修のコンストラクションマネージャー、
総予算100億円を超えるオフィス移転のプロジェクトマネージャーまで、多種多様な実績を積んできました。
この長年の経験を活かして、常にプロジェクトの入口から出口までの一気通貫した全体視野を持ちながらも
それぞれのステージに必要な役割に特化した、専門性の高いパフォーマンスを発揮します。
また、某大手IT企業での総務マネージャー経験もある為、インハウスの目線で課題を掴む事も得意です。
関連コラム
- 設備設計の正体総合建築工事(建築・設備工事)金額の半分は設備工事の費用です。工事工程の半分は設備工事の期間に割り当てられます。消防法を遵守する為に必要なのは消防設備(設備機器)の機能・性能の担保です。
- 「不可能です」という最高のアドバイスプロジェクトマネージャーにリスキーな相談をした時、「不可能です」と「条件次第です」では、どちらが有益なコンサルティングだと思いますか?あなたの相談が90%実現不可能だった場合でです。
- オフィス・働き方のアンケート調査第二次世界大戦中、軍部司令部は無事だった(生還した)戦闘機が砲撃された場所を一生懸命強化していたのです。 本来であれば、無事じゃなかった(撃墜された)戦闘機が砲撃された場所を強化しなければならないのに。
- 判断する責任プロジェクトマネジメントという仕事は「判断する」というアクションの連続です。そして、実はその「判断材料」が十分に揃っている状況は、ほとんどありません。
- オフィスづくりはUXデザイン?今オフィスづくりに必要なのは,、一連のプロセス、ユーザー体験・ユーザーとの共創といった(User eXperience)から生まれるソリューションです。