普通のそばに

Bambooコラム

こんにちは、バンブー社長です。
今回は私がオフィス新築プロジェクトをご一緒させて頂きました、テキスタイルアーティスト佐藤麻美さんの執筆です。
佐藤さんご自身が「空間」×「絵」に興味を持ったきっかけを振り返える、素敵なエッセイです。

普通のそばに

ASENDADA(アセンダダ)というテキスタイルを核としたデザイン会社を開設したのは2015年の春。
20歳の時に絵の仕事をスタートさせて、ASENDADAが立ち上がって今日までこんなに時間が経ったとは自分でびっくりする。
どれだけ年月が経ったと浸りたい訳でもないし、その数値に興味はないけれど、
空間に向けたアートワークという存在をいつから意識するようになったのか、興味を持ち始めたのかを振り返ってみたいと思う。

デザイン科に通っていた高校と短大時代に基礎デザインの勉強をしながら木版画を独学ではじめた。
ハガキサイズなどの小さなサイズではなく、とにかく大きなサイズを求め、
ホームセンターで1畳分の大きな板を仕入れてきては部屋を木屑だらけにしながら一心不乱に彫って刷った。
今考えるとかなり大胆な構図で、今だったら絶対に選ばないモチーフばかりでどうかしていたかもしれない。
だからか周囲の人たちが面白がってくれて、短大の頃に声をかけたいただき初めて個展を開催した。
現在は版画は制作していないが、その展覧会で空間×絵のスタイルが見えて今に繋がる。

独学だったので使うインクや絵の具は自分の好きなものを使っていたし、彫り方だって自己流だからとにかく荒かった。
力が入り過ぎて手が痛くなって。
けれど、彫り終わってインクを載せてバレンで刷って和紙をめくって板に載せたインクが和紙に写って
図案が見えた時のゾワッとした感じがたまらなくて一生懸命取り組んでいた。

個展では版画作品を額装して飾ることもしたけれど、やりたいことはそういうことではなく、壁に直接刷った和紙を貼りたかった。
だけどそれは難しかったので大きなタペストリーをいくつか作った。
たしか椿をモチーフにした版画だったのだけど、天井が高い階段の壁面に5点くらい垂らしたらやけに納得したことを覚えている。

ヴィンテージ家具のショップだったから、家具やライトの向こうに版画が見えて、家具を見ていると自然と版画も見えてくる感覚は、
改まったきれいなギャラリーでは表現できないレイアウトだと思ったし、”この感覚を表現していきたい”と瞬間で気持ちが決まったのかもしれない。

クライアントワーク以外でも、どんな作品を描こうかゼロから考える時、好みの建築物やインテリアを自由に構築し、
そこに似合いそうな作品を思い浮かべながら制作することがほとんどだ。
人が普段の活動を行う空間の背景や手足元でその場を演出している一役を担っていることに身震いし、これからも興味が続くのだと思う。

佐藤麻美(ASENDADAデザイナー/代表)
1977年札幌生まれ。高校、短大のデザイン科でデザインを学び、卒業と同時にフリーランスとして活動を開始する。2007年にサトウアサミデザイン事務所を立ち上げ、絵の制作、そしてその作品をデザインに落とし込むまでを一貫としたスタイルで、空間に向けたアートワークやパッケージデザイン、ショップのアートディレクションなどを手がける。
活動開始当初より興味を持っていたテキスタイルデザインを実際にシルクスクリーンの作業を行いながら数年間取り組み、2015年にテキスタイルブランド “ASENDADA” を設立。国内の捺染工場で職人の手によりプリントを行い製品化している。独特な間合いと感覚が反映されたデザインは、国内外の空間をはじめ様々な媒体に取り入れられている。

ASENDADA Co., Ltd.

https://asendada.com

<追伸>
実は、SPINNA BAMBOOのロゴ文字も佐藤さんに書いて頂いたものです。^^

だから、かっこいい♡