プロジェクト予算 - 発注金額の調整 -

Bamboo社長のプロジェクトマネジメント論
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こんにちは、バンブー社長です。

バンブー社長

あなたは外注業者に業務委託契約をしようとしています。
与件を伝えたところ、業者より1000万円の見積書が提示されました。
さて、どちが、あなたにとって有利な発注だと思いますか?

 
①1000万円のサービスを600万円に減額する。

②1000万円で1200万円分のサービスをさせる。

①の方が、差額が大きいのでお得のように見えるかもしれません。
何らかの経緯や努力、あるいは政治力などで成立した減額なのでしょう。
しかし6割の金額で100%のサービスを受けられると思う人は多分いないですよね。

バンブー社長

ビジネスの世界にナイチンゲールは存在しません。
良心的な会社でも、せいぜい900万円~800万円程度のクオリティに下がるのではないでしょうか。

 設計会社は、
  Aランク担当者をBランクに変更して(もしくはAランクの工数を減らす)
  最低限に、無難に竣工できる程度に社内のリソースを調整するでしょう。

 工事会社は、
  できる限り原価がかからないように安価な建材や工法を模索するので、
  それは品質にも表れます。
  また、追加工事などで「取り返そう」とされるでしょう。


それでも、800万円分のサービスを600万円で購入できるなら得だと思いますか?

バンブー社長

忘れないで下さい。あなたは「1000万円相当のサービスを享受したい」
という大前提のもと、この契約を検討しているはずです。

契約条件を整理する観点

800万円分のサービスが、
あなたにとって600万円支払う価値があるかは微妙です。

それは、もしかしたら、
300万円分くらいの価値しかないかもしれません。

誤解しないで頂きたいのは、減額交渉を悪としているのではありません。
むしろ、金の交渉は必ず実施するべきだと考えています。
但し、それには適正な力加減と、相手の条件をコントロールする能力が必要です。
何でもかんでも、とにかく安く。と闇雲に考えるのは危険だという事です。

バンブー社長

誤解しないで頂きたいのは、減額交渉を悪としているのではありません。
むしろ、金の交渉は必ず実施するべきだと考えています。

但し、それには適正な力加減と、
相手の条件をコントロールする能力が必要です。

「何でもかんでも、とにかく安く。」
と闇雲に考えるのは危険だという事です。

さらに、
そもそもの目的を見失ってしまうと本末転倒です。

「1000万円相当のサービスが欲しい」

いつのまにか。。

「とにかく発注金額を安くしたい」
(最初の目的なんだっけ??)

これでは、安物買いのゼニ失いになってしまいます。

それならば1000万円をお支払いして(950万でも構いませんが)
まずは、希望内容を100%網羅させる。

その上で、
プロジェクト進捗が楽になる、
安心して任せられる、
標準値以上の品質が期待できる、

そういった
「条件(サービス)をプラスする事」のほうが、
本来の目的を落とさない安全な交渉だと言えます。

この利点は、
業者側のモチベーションを落とさず交渉できるところにもあります。


これは、プロジェクトを構造的に捉えて考える有効性についての例えです。


抽象的な視点 

最終的に得られる結果を考えて俯瞰的に判断する


具体的な視点 

上司に金額交渉しろよ。と言われてたので、がんばります。

投資コストを検討する観点

もう一つ別の例を紹介します。

2億円の予算をかけて、オフィスを全面リニューアルしました。
今までよりも、グレードの高いパーティションのガラス間仕切で会議室を作りましたので、
一般的なオフィスよりも高級感のある仕上がりに、社員の方も満足してくれています。

最後に、会議室の中が丸見えにならないよう、
そのガラス間仕切に目隠しフィルムを貼ろう(追加発注しよう)という事になりました。
そこで設計者は2案を提示しました。

【A案】 ハイグレードパーティションに見合うデザインフィルム  100万円 

【B案】 デザイン性は無く、目隠しをする為だけの汎用フォルム  30万円


「目隠しをする」という機能的な差はありませんが、
このフィルムのデザインは、空間全体の印象に大きく影響してしまいます。

発注者の判断

A案の方が遥かにデザイン性が高くて良いのですが
値段が3倍以上も違うのであれば、さすがに安価なB案にします。


ここだけ聞くと、常識的な判断のように感じますね。



ポイントは、このオフィスは、
たった今2億円の費用をかけて完成した。という事です。


確かに、そこだけ見れば、
100万円30万円3倍以上の金額差があります。


一方で、プロジェクトの総予算から考えると、
比較するのは2億100万円2億30万円で、その差は0.35%しかありません。

バンブー社長

3倍以上と捉えるか?
0.35%と捉えるか?
これも、直面した課題(具体)で考えるか?
俯瞰(抽象)して考えるか?
その違いですね。

B案のフィルムを貼る事で、
せっかくのハイグレードパーティションがチープに見えてしまいます。
もしかしたら、社員の満足度が30%下がってしまうかもしれません。

正直なところプロジェクトマネージャーでも、
常に俯瞰的な感覚で構造的に考えられる人は少なかったりします。

意識していて損のない感覚なので、参考にして頂ければ幸いです。

今回も、読んで頂きありがとうございました。^^

新村裕介
株式会社SPINNA BAMBOO 代表取締役

飲食店の調理師、店舗の工事会社、大手不動産系列の建築デザイン会社、大手什器メーカーのPM部門を経て、
2022年8月 株式会社SPINNA BAMBOOを設立。
ブランドショップの工事担当から、オフィスづくりの法人営業、ビル改修のコンストラクションマネージャー、
総予算100億円を超えるオフィス移転のプロジェクトマネージャーまで、多種多様な実績を積んできました。
この長年の経験を活かして、常にプロジェクトの入口から出口までの一気通貫した全体視野を持ちながらも
それぞれのステージに必要な役割に特化した、専門性の高いパフォーマンスを発揮します。
また、某大手IT企業での総務マネージャー経験もある為、インハウスの目線で課題を掴む事も得意です。

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