共感しないとツマラナイ

Bambooコラム

相原毅の私的なオフィス論#3

前回のコラムでは、
経験の積み重ね・各所との交流・交感によって増強される「共感力」が生活や仕事を豊かにする、
みたいな話を長々と書きつらねてみました。

今回はその「共感力」が、これからの働き方や、テレワーク/モバイルワークと
どのようにつながってくるかについて考えていきたいと思います。

ひとりでできない仕事は誰とやる?

新規オフィス構築のお仕事を頂き、
スタートからローンチに至るまでには非常に多岐多数の方々と関わることになります。

クライアントの窓口になる総務や人事担当者、
そのために集められたプロジェクトチームの面々、
設備設計者、デザイナー、なんとかコンサルタント、
移転先ビルの管理会社、建築電気空調衛生の各施工担当、情報通信、家具メーカー、
電話、複合機、自販機、セキュリティ、映像音響、
かわったところでは風水師、ペットセラピストなんて方々も(ホントよ)・・・ 
列挙にいとまがないほどです。

色々とクセや特徴をお持ちの方々が多い中(この業界たまにクセスゴいます)、
皆さんは、どんな人たちと仕事がしたいですか? 

ワタクシはシンプルに「好きな人」たちと仕事がしたいです。

そりゃそうだろって声が聞こえてきそうですが、
「好きな人」とはどんな人なのかを掘り下げて考えると、
そこまで身も蓋のない話ではないと思います。

ちょっと抽象的なイメージかもしれませんが、
すごーく遠くにいる人を好きになるのって難しいですよね?

スタイルや輪郭くらいは見えるけど、
顔はあんまり見えないし、匂いもわからない、声も聞こえない、
会話出来ないから何考えているかもわからない。

それでもなんだか妙に惹かれるものがあった場合、皆さんならどうします?!
ワタクシなら一歩でも近寄ることで、理解できる要素を増やそうとします。

そして新たな「好き」が見つかれば、
もう一歩もう一歩と近づきたい気持ちが生まれてくるのではないでしょうか?

前述の「共感力」と「好き」は非常に密接な関係にあります。
多くの経験や交流・交感を重ねて幅広い共感力を得ている方々は、
周囲の人たちの特性や能力、知識とシンクロする率が高く(祝スティング来日)、
「好き」になるポイントを多く有している、
故にそれぞれとの関係性を良好に保つことが得意なのではないかと考えられます。

すなわち「好きな人」たちと一緒に仕事をするというのは、
たまたまの運や組み合わせではなく、
中心となる貴方のマインドセットがどのような状態にあるか、
それが大きく影響するのではないでしょうか?(自己啓発本っぽいかな)

ちょっと話がカタくなりましたが、
要は自分が気持ちよく周囲との関係性を保っていくためには、
相手のことをよりよく知ろうとするとか、
「好き」な部分を能動的に探そうとしてみることも必要ではないかと思うわけです。

テレワークってどうですか?


国を挙げてキャンペーン中のテレワーク、
ワタクシ的には結構日常的なものとなった感があるのですが、
皆さんのおかれる環境では如何でしょうか?

場所の制約なしに色んな事が出来るようになったのは
本当に有難い(流行り病のせい?おかげ?)し、
共働きの子育て世代にとっては福音とまではいかなくても、
以前より良い状況になったのは間違いないと思います。

Bambooコラム


いまワタクシが携わっているお仕事でも、大勢の設計者が必要なので、
遠隔地から数人サポートで入って頂いていますが、
プロジェクトの進行が基本WEBベースなので、
打合せ等も特に違和感なく進めることが出来ています。

そう、通常業務はちゃんと出来ていますよね?
同じ場所を共有しなければ解決できないものって、意外と少ないことがわかってきたし、
必要な時に必要な人員だけが集まれば、それも効率よく納められる。
時間や移動の無駄がなくなって万々歳ってことでよろしいですか、皆さん?

先日、かの国の巨大IT企業の偉い人が
「これからは全員出社!出来ない人はクビ!」
みたいな宣言を出して相当物議を醸しだしていますが、
これってたぶん言葉の切り出し方の問題で、
真意はこの言葉の中だけにとどまらないのではないかと思っています。

彼らはこれまで誰も想像し得ないサービスやコンテンツを世に出す、
極めて高い創造性を要する仕事をしています。

それらをハイレベルで維持し続けられている原動力として、
大量のインプット/アウトプットや周囲からの刺激によって起こる
試行錯誤の繰り返しが日常的なものとなっているはずです。

高い「共感力」を持つ人々が相互に激しく刺激しあう環境、
それを形成する条件を効率的且つ最大限に求めると、
リアルな対面業務が中心になるっていうのは、
ワタクシにとっては合点がいくものです。

みんなが↑のカタチに倣う必要はないでしょうし、
テレワーク/モバイルワークの利便は大いに活用すべしと思います。

効率や生産性を最大化することでワークライフバランス、
QOLの向上につながることも十分に理解しているつもりではあります。

ただワタクシ個人の見解ですが、いまこの瞬間の状況判断、対応だけでなく、
どうやって仕事を続けていく為のモチベーションを保ち続けるか?
という視点も、無視できないものだと考えます。

前述の共感力の話につながりますが、
個々の関係性が深まらないなかで仕事(プロジェクト)を進めていくのって
ツマラナイって感じてしまうのです(個人の見解ですよ)。

ツマラナイと思っていることを続けたくないし、
共に感動し、落胆し、驚愕し、爆笑し、憤怒しつつ、
周囲とのコミュニケーション深度を深めて「共感」しあえる関係性を構築することが、
ワタクシの仕事のなかでは不可欠なのです(個人の見解ですって)。

だんだんと書く内容の「私的」度合が高まっている気もしますが、
大事なところはワークスタイルにおいても、
自分の軸が形成出来ているかどうか、ではないでしょうか?

ワタクシも未だブレブレの惑々世代ですが、
(いつ不惑?)理想のビジョンに向かって、皆様と共に日々精進していければと思います。

なかなかオフィス環境の具体的な構築については話せていませんが、
いろいろと考えていることはありますので、またご機会頂けると幸いです。

毎回戯言ばかりで大変恐縮ですが、
ここまでお付き合い頂き誠に有難う御座いました。


御機嫌よう。

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相原 毅
株式会社イトーキ ワークスタイルデザイン統括部 
コンサルティングセンター シニアディレクター

1991年からインテリア設計事務所にてキャリアをスタート。主に丸の内界隈のオフィス移転・改修等を中心にインテリアデザイン設計及びプロジェクトマネジメント、コンサルティングを担当、2020年より現職
2000年~2006年、三菱地所 ビル管理部 新ビルテナント工事請負室に出向、丸の内再開発事業に携わる
主幹プロジェクトにて2010年日経ニューオフィス推進賞、2018年日経ニューオフィス経済産業大臣賞、並びに日本ファシリティマネジメント大賞受賞
工作、エレキベース、自転車、少年野球が好き

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  • 私的なオフィス論
    執筆者:相原 毅    株式会社イトーキ  ワークスタイルデザイン統括部  コンサルティングセンター  シニアディレクター
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