正義の味方

こんにちはバンブー社長です。
今回は、私の決して忘れられない体験談を
完全ノンフクションで紹介させて頂きたいと思います。

それは日本で知らない人のいない超大手企業の、
本社オフィス移転プロジェクトでした。

床面積は8000坪を超え、
私たち(当時の所属会社)が「PM&設計」で契約した金額も1億円近いビッグプロジェクト。
私は、そのプロジェクトマネージャーでした。

そして、今回ご紹介するのは、
そのプロジェクトの竣工直前に発生したトラブルについてです。
設計提案した建材に問題があり、お客様からクレームを受けたのです。

経緯


その問題の建材は、
会議室の壁面に設置した特殊なカラーガラスでした。

そこには、プロジェクターの映像が投影できる機能を求められていました。
設計者として、スクリーンを吊らずに会議室をデザインしたいと考えていたところ、

偶然にも某ガラスメーカーのX社から紹介された新商品は、理想的なカラーガラスでした。


スクリーン機能があり 
ホワイトボード機能があり 
そして、デザイン性が高い(カッコイイ)
その上で、同等品よりもリーズナブルだったので、どストライクです!


製品パンフレットにも
「プロジェクターの映像が美しく投影できます」
と、大々的に謳われているので安心!

そのガラスを提案して、即座に採用が決定しました。

事件発生

その壁面ガラスの施工が完了後、
AV工事業者がプロジェクターを設置して投影試写をおこなった時に問題が発覚しました。

プロジェクターの光源がガラスに反射してしまい
そのハイライトが眩しくて投影画面が全く見えないのです。

初めは、プロジェクターの設置に問題があると考えてましたが、
ガラスからの距離を変えても、
ガラスとの角度を変えても、
その光源の反射は消えませんでした。

検証の結果、そのガラスには、
スクリーンの機能を果たせる製品ではない。と、判明しました。

新商品の為、まだプロジェクター投影の実績が無かったのです。
これが、設計者の建材選定ミス「設計瑕疵」となりました。

Bambooコラム

責任の所在

責任の所在を明確にする為、X社と協議をしました。

「プロジェクターの映像を投影できます」と、紹介されたのです。
その機能の保証を製造会社に求めるのは当たり前の事です。

X社は大手企業ですし、
誠意ある是正対応をしてくれると信じていました。


しかし、その期待は完璧に裏切られました。


初めはX社の営業窓口のAさんと協議を始めましたが、
Aさんはその窓口を上司にバトンタッチしました。
その後、私の協議する相手は、プロモーション担当・技術開発の責任者など、
入れ替わり立ち代わり、、要するに、たらい回しです。


そして、彼らは、それぞれの立場からの一方的な見解で、
自分たちの非は一向に認めなかったのです。

例えば、こんな感じです。

製品パンフレットにプロジェクター投影を推奨しているでしょう!

X社

パンフレットに記載しているコメントは、用途提案であり推奨ではありません
実際にその機能が満たせるかどうかは設計者の判断に委ねられていると考えています。

心に突き刺さる、
氷のように冷たい言葉でした。

屁理屈や言葉の帳尻合わせ、
「言った」/「言わない」の水掛け論。
不毛な協議に時間ばかりが取られていきました。

営業窓口のAさんも、
これ以上この話に関わりたくないと言わんばかりの、
事務的な対応に変わっていきました。



責任の所在はどうあれ、
お客様に対しては早急に是正対応をしなければなりません。

X社の別商品(今度こそ機能保障が約束された商品)
への交換工事をおこなった場合の費用は500万円です。

X社が非を認めないのであれば、
その費用は私たちPM設計会社が負担しなければならない状況でした。


結局、X社が一切の費用負担を認めないまま、
私は会社へ500万円の支払申請をおこない、その許可を得ました。

こんな理不尽に正当性を通せない自分を情けなく感じた事を、よく覚えています。

Bambooコラム

正義の味方

X社の別商品に交換する是正工事
その費用500万円は2つの項目に分けられます。

 ①_材料費(300万) + ②_工事費(200万) = 合計500万

 ①ガラスをX社から購入    ②X工務店に設置を依頼

X工務店は、私が以前からガラス工事を発注していた会社で、
担当者のBさんは10年以上の付き合いがありました。

久しぶりにお会いしたBさんは、もう部長にまで昇進されていました。

Bさんとの再会から、状況が好転し始めました。

なんと、経緯を知ったBさんが、
「そういう事情ならば、費用の請求はできない」と言ってくれたのです。


X工務店が
設置工事の無償対応を申し出てくれました。



X工務店は、この材料の問題には一切関係がありません。
シンプルに無償工事という「金銭的な損」を自ら受け取ってくれただけです。

バンブー社長

「Bamboo社長が正しい(X社は間違っている)」とする行動が
親会社への反旗になってしまわないか、心配になってしまったくらいです。    

私から、減額要求は一切おこなっていないにも関わらず、
Bさんは、X社グループの責任として考え、自分の裁量で可能な最大限の筋を通してくれたのです。


Bさんの判断は、ポジティブな連鎖として続きました。

なんと、今度はX社が材料の無償提供を申し出てくれました

結果として、私たちには一切の費用負担が発生しなかったのです。


でも、なぜ???
頑なに非を認めなかった人達が方針を変えたした理由は?

バンブー社長

私は、男気あるBさんが、X社に話をつけてくれた。と、思いました。   
そして、お礼の電話をしました。



電話口でBさんは自嘲気味に言いました。
「X工務店(子会社)からX社(親会社)に、そんな主張はできないよ。」
そして、私が予想もしていなかった経緯を教えてくれました。


なんと、
X社が無償対応を決定した理由は
ずっと責任逃れのスタンスをとっていたX社のAさんが、
「やはり、私たちが責任をとるべきです」と上層部に掛け合い方針を覆してくれたのです。


Bさんは続けて言ってくれました。
「Aは、自分に非がある事を分かっていながらも、それを認めない態度をとってしまった事を後悔していた。
 ちょっと行動するのが遅くなってしまったけど、彼なりに正義を貫く努力をした結果なんだ。
 だから、今回は色々と嫌な思いさせちゃったけど、もう水に流してやってくれないか?」

心に響く温かい言葉でした。
本当に嬉しかった。


是正工事が完了した後、
Aさんから謝罪のご連絡を頂いた時、実はちょっと泣きそうになりました。^^;

Aさんは、自分が社内の上層部に掛け合った事は言いませんでした。
私も、Bさんから経緯を聞いていた事は言いませんでした。

お客様には一時的にご迷惑をおかけしてしまいましたが、
私たちの真摯な姿勢が伝わり、最終的には是正工事を含めた対応に感謝して頂きました。

これは、私にとって忘れられない大切な経験です。
Bさんから始まった責任感の連鎖が、最後にはお客様にまで伝わったのを感じました。

バンブー社長

Aさん、Bさんには、今でも心から感謝と尊敬の気持ちを持っています。  
私も、二人のように、目先の忖度に囚われず、
自分が正しいと思う判断から逃げない人間でありたいです。

500万円を払うつもりでいた上司に聞かれました。
「あれ、金払わなくて良いの?」
「あ、正義の味方が登場したので、もう大丈夫です!」

Bambooコラム

新村裕介
株式会社SPINNA BAMBOO 代表取締役

飲食店の調理師、店舗の工事会社、大手不動産系列の建築デザイン会社、大手什器メーカーのPM部門を経て、

2022年8月 株式会社SPINNA BAMBOOを設立。
ブランドショップの工事担当から、オフィスづくりの法人営業、ビル改修のコンストラクションマネージャー、
総予算100億円を超えるオフィス移転のプロジェクトマネージャーまで、多種多様な実績を積んできました。
この長年の経験を活かして、常にプロジェクトの入口から出口までの一気通貫した全体視野を持ちながらも
それぞれのステージに必要な役割に特化した、専門性の高いパフォーマンスを発揮します。
また、某大手IT企業での総務マネージャー経験もある為、インハウスの目線で課題を掴む事も得意です。

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