フィルターを通す
こんにちは、バンブー社長です。
「あの人は、色々な事にクレームを出すタイプだよ」と聞くと、
面倒くさいヤツを想像して、距離を置きたくなってしまうかもしれません。
クレームを出す人に拒否反応を感じる。
自分がクレームという行為を避けている。
そんな考えをお持ちの方には、ちょっと誤解を解いて頂きたいのです。
なぜならば、実は建築のプロジェクトマネージャーは、ある意味クレームを出すプロでもあります。(><)
クレームとは「自分の主張が正当なものなのか?相手に確認と協議を求める行動」です。
常識と礼儀をわきまえた話し合いをもって合意形成するものであって、決してイヤガラセではありません!
なぜ、こんなに工事期間が必要なのですか?
なぜ、こんなにコストが発生するのですか?
なぜ、この品質が基準を満たしていると主張できるのですか?
説明の責任を果たせていましたか?
報告の義務を怠っていませんでしたか?
って、ぜんぜん印象が改善するようなセリフじゃないね。💦
理不尽な主張を高圧的にすれば建設業法でも一発アウトになるので、トンチンカンなクレームを出すプロマネはいません。
納得のいかない(理解が及ばない)条件や品質、コストについて、常にきちんとした説明責任を求める。という意味です。
だって、自分の基準に合わない事をスルーしていたら、プロジェクトマネジメントになりませんからね。
当然ながら「私が間違っておりました、スミマセン」だって結構あります。
そうだとしても、別に相手とケンカしている訳じゃないので、
「あ、なるほど、そういう事ですね。失礼致しました。ご説明ありがとうございます。」
とお伝えして、またお互い前向きな気持ちでプロジェクトを続ければ良いだけの話です。
そのような経験の積み重ねが、判断軸の精度を高め、その後の自信にも繋がっていきます。
ノーリスク・ハイリターン 積極的におこなうべき超お得なアクションだと思います。
ぜひ、躊躇せずに、相手への敬意を持ちながら、どんどんクレームを出していきましょう!
ところで、もし協議の相手にこんな主張をされたら、どうしますか?
「~さんが、○○と言うから。~会社の見解は○○だから。結論は○○です。」
~さん、~会社って何?? 私が話しているのはYOUです。って、思いますよね。
私ならば
「その前提のもとで、あなた自身の意見が○○なのですね。あなたの会社の公式見解が○○なのですね。」
という言質は必ずとります。要するに、無責任な人間とは対話する気にもなれない。という事です。
こんなのは、まるで「真剣な主張」VS「伝言ゲーム」ですからね。
私は、自分の部下や後輩には、
「自分のフィルターを通して会話しろ」と指導していました。
自分では判断ができない報告を繋ぐ場面にしても、意味のない伝言ゲームではダメ、
それを自分の言葉として(フィルターを通して)取り扱いなさい。という意味です。
もし、そのフィルターの精度が甘くても、間違っていても、私は怒りませんでした。
但し、それが「スルーパス」だった時は、厳しく注意しました。
自分の存在価値を見出せないような仕事だけはするな。と教えたかったのです。
例えば、建築業界は多重請負構造になっています。
製造業も、サービス業も同じような構図になるかと思いますが、
要するに、契約した会社(元請け)のみで全受託業務が完結することは少なく
一次下請け、二次下請け、が実務(実務の一部)をおこなう事になります。
「施主」(発注者) ⇒ 「元請け」(営業) ⇒ 「下請け」(工場)
あなたは施主から直接発注をされた「元請け」の立場です。
そして、「下請け」の工場に再委託して完成した製品の品質は60点でした。
「施主」は80点の品質を求めていたので満足していません。やり直しを求めています。
「下請け」の品質基準では60点が合格ラインです。やり直しを拒否しています。
施主 80点が正しい
元請け ????
下請け 60点が正しい
「施主」にとって「下請け」の品質基準は関係ない話です。
「下請け」にとって「施主」の求める品質を担保する全責任はありません。
さあ、どうする?
施主と契約したのも、下請けに発注したのも「元請け」のあなたです。
あなたのフィルターを基準にして協議するしかありません。
あなたの品質基準が60点ならば、やり直しを拒否するべきです。
あなたの品質基準が80点ならば、下請けを強制的に動かすか、別業者を使うなど追加原価で赤字になったとしても、やり直し要求に応じるべきです。
あなたの品質基準が100点ならば、「施主」からのクレームがなくても、自らやり直しを申し出るべきです。
もの凄く当たり前の事を書いていますが、
残念な事に「下請けの業者に確認したところ~。下請けの工場に確認したところ~。です」
と、平気で言ってしまう情けない元請け会社の担当者も世の中には大勢います。
私が部下に絶対許さなかった、存在価値の無い仕事の典型例ですね。
そんな時は「下請けの事情なんて聞いてねーよ!」と、一蹴する事をお勧めします!
組織(会社)の中でも同じような事が発生してしまいます。
例えば、無責任なBさんが情報伝達の中間にいる場合です。
<指示・監理>
「Aさん」(責任者) ⇒ 「Bさん」(管理者) ⇒ 「Cさん」(実務担当者)
<報告・承認>
「Cさん」(担当者) ⇒ 「Bさん」(管理者) ⇒ 「Aさん」(責任者)
Bさんは、Aさんの命令にも、Cさんの実務報告にも、自分のフィルターを一切通さずに全てスルーパスします。
判断にも業務にも一切関わっていないのですから、もし不具合が発生しても彼に落ち度はありません。
(責任をなすりつける事ができます)
要するに、中間にいても、自分がボールを受け取らない努力だけをすればOK。
全ての責任を「Aさん」と「Cさん」がとってくれるでしょう。
まさに完璧なお仕事です!
記載した2例は極端な表現をしてしまいましたが
程度の差はあれど、近しい体験をした事のある方も多いかと思います。
自分のフィルターを通さない組織も人間も、ただの迷惑なお荷物になってしまいます。
それでも、その組織が契約上(お金の流れ)の上位にいたり、その人間の役職が高かったり、
それを「必要悪」として諦めざるをえないパターンも多いですよね。
構造を否定するだけなら簡単ですが、そうもいきません。
現実問題としては周りが帳尻を合わせて、表立っては何事も無かったかのように、
お荷物を持ったままプロジェクトをクリアしなければならないのが宿命です。
でも、私たちは、その物体Xを次回ソリューションすべき課題として認識しておくべきでしょう。
少なくとも、自分のフィルターを通す事・自分のフィルターでバリューを出す事は
私自身、これからもずっと意識し続けていきたいと思っています。
「パパ、あの王様なんで裸なの?」って質問に、答えてあげる為にもね。^^
新村裕介
株式会社SPINNA BAMBOO 代表取締役
飲食店の調理師、店舗の工事会社、大手不動産系列の建築デザイン会社、大手什器メーカーのPM部門を経て、
2022年8月 株式会社SPINNA BAMBOOを設立。
ブランドショップの工事担当から、オフィスづくりの法人営業、ビル改修のコンストラクションマネージャー、
総予算100億円を超えるオフィス移転のプロジェクトマネージャーまで、多種多様な実績を積んできました。
この長年の経験を活かして、常にプロジェクトの入口から出口までの一気通貫した全体視野を持ちながらも
それぞれのステージに必要な役割に特化した、専門性の高いパフォーマンスを発揮します。
また、某大手IT企業での総務マネージャー経験もある為、インハウスの目線で課題を掴む事も得意です。
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